HELLO 360度
4時45分。めざましテレビで髭男のHELLOがかかった。
この前の4月からテレビでも町の中でもふいにこの歌が流れると、言い表しようのない痛みと拒否感が襲う。
理由は不明だけど、多分、多分だが、aさんが部屋で死んでいるのを見つけて、全身の血の気が引いて、そこから救急隊、警察、葬儀社…とやってきて、最後aさんの身体が家から出て行くまでの一連の時間、つけっぱなしのTVから流れるこの歌が耳に入っていたからだろうか。
aさんを起こしにドアを開け、声をかけ、おかしいな?と何度か声をかけ、徐々にあってはならない異変に気づき、否定し、現実が迫り、119番を押す。
あの場面で背景にTVからのこの歌が流れて居たのだろうか。
さっきまで警察やらみんながいて、次々となにかを聞かれて応答し、そうしていることでなんとか正常を保てていた自分が、「では」と全員出て行って、aさんの身体もいつのまにか運び出されていて、それはもう二度とここへ帰ってこなくて、
昨日までいることが当たり前だったaさんが今日を境に二度と存在しないことになって、当然ここへももう現れることはなくて、
皆出て行ってaさんの身体も出て行って、
「はい。話は済みましたよ、いつもの日常に戻って下さいね」
というような時間が再び目の前に差し出されて、空間はいつもと何ら変わらない、いつもと同じ、昨日とも同じ空間で、でもaさんだけがいきなりいなくなっていて…
そんな取り残され時間、TVから流れるこの歌が空間に流れていたのだろうか。