2020-10-19 第三六章 その時のことをアンは、その晩、自分の部屋の窓辺に長い間すわりながら思いだしていた。そして過去を振り返り、未来を夢見た。外ではスノー・クイーンが月光を浴びて白くかすみ、オーチャード・スロープの向こうの沼ではかえるが鳴いていた。アンはこの夜の銀のような平和な美しさをいつまでも覚えていた。それがアンに悲しみが訪れる前の最後の夜だった。 そして一度その悲しみの冷たい、神聖な手にさわられると、人生は二度ともととおなじにはならないのである。