雨やどり〜azurの日記

令和二年、四月。家族が突然死で私の人生からいなくなってしまい、世界が変わってしまいました。「諸行無常」という言葉の意味がわからないけど、今の私には抵抗感しかありません(でもどうやら違うようですね)。後悔、罪悪感、悲しさ、寂しさ、その他雑多な感覚のなかで、意識が継続されることが苦しいです。

7月11日という日

今日は7月11日です。

 

私がAさんと初めて会った時、その仕事現場の千秋楽が2004年7月11日(日曜日)でした。

仕事の初日初対面は6月24日ですが、記念とする日にちはやはり7月11日が妥当という認識です。でも初日のこともよく覚えています。

 

業務としては7月10日夜にすべて終わるのでそれで帰宅するのが筋という見方もありますが、 Aさん権限でもう一泊確保してくれて本来もう業務のない7月11日にも私は現地に存在していました。

このままなんとなく離れがたい思いは同じだったのだと思います。

 

Aさんのほうは11日も残務や見届け業務などが少し残っており、それに合わせて私はその都度言われた喫茶店や場所などで待機していました。

 

そんな待機の最中、そごうデパートにふらりと入り、そうだ!と思い立ちシャネルNo.5の香水を買いました。

人生で初めて、シャネルの5番を自分のために自分で買う日…それは特別な日、想定外にやってきた転機、一生忘れない何かの印になり得る時。

そんなふうにマーキングをしたくなり、手に入れました。

 

その香水は3分の1ほど残っていて、瓶のシールはいつの間にか剥がれ落ちてしまったけれど今もここにあります。

 

同じ日、携帯電話のドコモのメールアドレスを変更。

文字列のなかに0711の数字を加えました。そのアドレスは今もガラケーのほうでは生きているのだけど、もうそこにメールを送ってくる人はほぼいません。解約しようかと考えたこともあったけれど、今や解約のタイミングを失いました…

 

そんな7月11日ですが昨日は少し華やかな花を買って花瓶に挿してみたのですが、今朝突然の連絡により今日からまた一週間の出張が決まり、ただ今電車にて現地ホテルまで移動中です。

大荷物を荷造りして、「まーたお前は、岩でも持ち歩くのかあ!」とヤジ飛ばしてくれる人はもういません。私より身体が悪いのに階段まで運んでくれる人も、車で現地ホテルまで送ってくれる人ももういません。

ひとり淡々とする荷造りはなんと虚しいものでしょうか。

お花のお世話もできなくなるし、よくよく考えたらお盆ですよね。祖父祖母の墓参にも行けないということになります。

 

先週までも出張、今日からも出張。

昔、Aさんとの毎日がハイテンポで好調だった頃はそんなこともありましたが、ここ数年ずいぶん長い間私は暇なニートのようなものだったので、久しぶりのサイクルです。

 

家を発つ前、そのシャネル5番の瓶を久しぶりにあけて、香りを味わってきました。(別段好きな香りというわけでもないのですが)

 

Aさんとの人生での節目に手に入れた5番。

 

もう減らしたくないからつけることもないかもしれない5番。

 

Aさんとも最初の数年のうちは意識することもあった7月11日というこの日。

でもここ10年ほどはもう、ただのなんでもない365日の中の1日として意識すらしてこなかった。

 

こんなにも大事な日だった。

 

でも私は覚えているけど、Aさんは忘れているかもね、日にちなんてね。

 

Aさん、あの7月11日は私たちの仕事の千秋楽だったね。16年後の今日、Aさんはじつはいなくなってて私はひとりで明日の初日に向かって移動中だよ。

16年間てとても短いよね、短かったよね、たったの16年間を経ただけで、人が一人いなくなることなんてあるんだね。

この16年間いつも意識を一緒にしていたけど、急にひとりになっちゃったよ。

 

一昨日は、急に家にいられなくなって外にでてみた。バスにも電車にも乗った。

夜暗くなってからさてどうしよう?と思いつつ帰ることにしたけど、今度はバスに乗りたくない気持ちになってタクシーに乗るなどした。
バス停から家までの道のりは前から嫌いで、単にそれを避けたかっただけで無駄な出費に。
でも毎日毎日そんなことはできるわけもなく。

誰かが「寝逃げするより他ない」とか言ってたけどそれも効かなくなったらあとは何があるだろう?